第16話Femme de ma vie ~Homme de ma vie <16>パリのアパルトマンの一室。 自宅療養ということで退院してきたばかりのテヨンはギジュが止めるのも聞かずギジュの食事を作りたいといってキッチンに立っていた。 「まだ、熱が下がったばかりなのに無理するとぶり返すぞ」 「大丈夫よ。昔から身体だけは丈夫なんだから。それに・・何だかとっても気分がいいの。こう、雲がパァーっと晴れたみたいな感じがするのよ。」 テヨンは心配するギジュの言葉にそう答えると明るい声で笑った。 「段々、お前らしくなってきたな。」 「そういう貴方もね。」顔を見合わせて微笑む二人。 離れ離れだった間に出来た二人の距離は着実に近づきつつあった。 「揺さんたちどうしてるかしら。結局私、揺さんの彼にはご挨拶できなくて。ねえ、驚くって誰なの?私の知っている人?」テヨンは興味津々に尋ねた。 「それがさ。聞いて驚くなよ。あの『イ・ビョンホン』なんだ。」 「え~~~~っ!うそぉ~」 ここ数年パリに住んでいるテヨンにとっても彼は超有名人だった。 「でも、何で日本人の揺さんと?」 「そこまでは聞いていないけどきっと「縁」なんじゃない?」ギジュはあっさりと答えた。 「だって、俺とお前だって傍からみたら『何で~』っていうカップルだろ。人様のことは言えないよ。」 「それもそうね。でも、揺さんと『ビョンホンssi』に会いたいなぁ~。ねえ、ここに食事に誘わない?」 「お前、退院してきたばっかりだろ?大丈夫なのか?」 「だって、撮影だって終わっちゃったから揺さん帰っちゃうかもしれないし。もう一度会ってお礼が言いたいし・・・『イ・ビョンホン』も見てみたいわ。」 「信じられない。。昨日まであんなにしおらしい顔してたのに・・」 ギジュは呆れながらも笑ってそう言った。 「絶対無理するなよ」 「わかってる」 ギジュは携帯電話を取り出すとおもむろにボタンを押した。 ビョンホンと揺が食事を終え部屋に戻るとビョンホンの携帯に着歴が残っていた。 「誰からかな。」見ると発信元はギジュだった。 「携帯番号まで教えるなんてほんとに仲良しさんになったのね。」 揺はからかうように言った。 バツが悪そうにビョンホンは後ろをむくとギジュに電話をした。 「もしもし、お電話いただいたみたいですいません。気がつかなくって」 「いえいえ、おくつろぎのところすいません。テヨンがどうしても揺さんと貴方が帰る前にお礼がしたいといいまして。明日夕食に招待したいらしいんですが。」 「テヨンさん、身体大丈夫なんですか?」ビョンホンは驚いたように言った。 「自宅療養ということで帰ってきたんですが帰ってきたらぴんぴんに元気で実は困っているんですよ。たいしたお構いも出来ませんが。」 「ちょっと待ってください。」 「テヨンさんが明日夕食に招待したいって。身体は大丈夫らしい。どうする?」ビョンホンはそう揺に話しかけた。 「テヨンさんのビビンバ絶品なのよぉ~。食べた~い!どうせ明日の夜帰るつもりだったし。お邪魔しようよ。」 揺のその言葉を聞いてあわよくばここでもう一泊と考えていたビョンホンは瞬時に「ビビンバ」と「揺のおっぱい」を天秤に掛けた。 (仕方がない・・・今回はビビンバにしとくか。) 「わかりました。じゃ、明日お邪魔します。」 「無理にお誘いしちゃってすいません。パリに滞在しているスヒョクも呼んでおきますので。では明日、待ってますね。」ギジュはそういうと電話を切った。 (やっぱり惜しかったかなぁ。いや、今晩のうちに思う存分頂いておけばいいか。) ビョンホンはニヤッと笑うと傍らに座る揺を抱きしめた。 |